鏡映と回転はどちらも面積を保つが、何が両者を区別するのだろうか。
このページでできるようになること
行列式の絶対値を体積倍率、符号を向きとして幾何的に読めるようになる。
行列式は可逆性を判定する数であると同時に、線形変換が体積と向きをどう変えるかを表します。
単位立方体を列ベクトルが張る平行多面体へ送り、積の公式で一般の領域へ意味を延ばす。
$a_1,\ldots,a_n\in\mathbb{R}^n$ を列にもつ行列を $A$ とする。これらが張る平行多面体の体積は
$$
|\det A|
$$
である。
まず直交する辺の場合、体積は辺長の積であり、直交基底を標準基底へ移す直交変換の行列式の絶対値は1なので式と一致する。一般の独立な辺へGram--Schmidt法を施すと、各段階で前の辺の線形結合を引くため行列式は変わらず、得られた直交辺の長さの積が高さ×底面積による平行多面体の体積になる。従属なら両辺とも0。
上の証明は後章のGram--Schmidt法を先取りしています。二次元では底辺×高さ、三次元では底面積×高さとして直接確認できます。
順序付き基底 $B$ の行列式が正なら標準基底と同じ向き、負なら逆向きとします。基底変換行列の行列式の符号により、二つの基底の向きが一致するか判定できます。
$$
R=\begin{pmatrix}\cos\theta&-\sin\theta\\\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix}
$$
は $\det R=1$ で面積と向きを保ちます。鏡映
$$
S=\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}
$$
は $\det S=-1$ で面積を保ちながら向きを反転します。
微積分で変数変換を行うと、微小な体積は微分行列の行列式の絶対値だけ伸縮します。線形の場合、その倍率は場所によらず $|\det A|$ です。
同じ行列式をもつ変換でも、方向ごとの伸縮は異なり得る。$\operatorname{diag}(2,1/2)$ と回転行列はいずれも行列式1だが、前者は円を楕円へ変える。方向別の伸縮は特異値分解で調べる。
原点と $a,b,c\in\mathbb{R}^3$ を頂点とする四面体の体積が $|\det(a\ b\ c)|/6$ である理由を説明せよ。
$a,b$ が張る三角形を底面とみる。その面積は、$a,b$ が張る平行四辺形の面積の半分である。$c$ の底面に垂直な成分の長さを $h$ とすると、$a,b,c$ が張る平行六面体の体積は
$$
2\,S h=|\det(a\ b\ c)|,
$$
ここで $S$ は三角形の面積である。
底面から高さ $t$ の位置で四面体を底面と平行に切ると、断面は底面を比 $1-t/h$ で縮小した相似な三角形なので、その面積は $S(1-t/h)^2$ である。したがって四面体の体積は
$$
\int_0^h S\left(1-\frac{t}{h}\right)^2dt
=\frac{Sh}{3}
=\frac{|\det(a\ b\ c)|}{6}.
$$
次章では $\det(A-\lambda I)$ を使い、変換の中で方向を保つ固有ベクトルを探します。
一つの数で拡大率・退化・向きの反転を同時に検出でき、Jacobianへの入口ができた。
次へ持ち越す問い
この見方を、次のページではより広い対象またはより計算しやすい形へ移す。
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