同じ写像の行列が基底ごとに変わるなら、どの情報を写像自身の性質と呼べるだろうか。
このページでできるようになること
基底変換を相似変換として計算し、基底に依存しない量を見分けられるようになる。
同じ線形変換でも、座標軸を変えると行列の成分は変わります。どのように変わるかを追えば、行列の見かけと写像の本質を区別できます。
$B,B'$ を $V$ の基底とし、$P$ を $B'$ 座標から $B$ 座標への変換行列、すなわち
$$
[x]_B=P[x]_{B'}
$$
を満たす行列とします。
旧座標から新座標への変換を入力側と出力側に挿入し、$P^{-1}AP$ を得る。
線形変換 $T\colon V\to V$ の二つの表示行列は
$$
[T]_{B'}=P^{-1}[T]_BP
$$
を満たす。
任意の $x$ について
$$
\begin{aligned}
[T(x)]_{B'}
&=P^{-1}[T(x)]_B\\
&=P^{-1}[T]_B[x]_B\\
&=P^{-1}[T]_BP[x]_{B'}.
\end{aligned}
$$
左辺は $[T]_{B'}[x]_{B'}$ でもある。すべての座標ベクトルに同じ作用をする行列は各標準基底への像、すなわち各列が一致するので等しい。
この関係を相似と呼びます。
$$
A=\begin{pmatrix}2&0\\0&3\end{pmatrix},
\qquad
B'=((1,1),(1,-1))
$$
とします。新基底の列を標準基底で並べると
$$
P=\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix},
\qquad
P^{-1}=\frac12\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix}.
$$
したがって
$$
[T]_{B'}=P^{-1}AP
=\frac12
\begin{pmatrix}1&1\\1&-1\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}2&2\\3&-3\end{pmatrix}
=\begin{pmatrix}5/2&-1/2\\-1/2&5/2\end{pmatrix}.
$$
旧座標から新座標への変換を入力側と出力側に挿入し、$P^{-1}AP$ を得る。
$A'=P^{-1}AP$ なら $\operatorname{rank}A'=\operatorname{rank}A$。
$\operatorname{im}A'=P^{-1}(\operatorname{im}A)$。$P^{-1}$ は同型なので部分空間の次元を保ち、像の次元としての階数が等しい。
行列表示には定義域と終域の基底が必要である。同じ数表でも基底が違えば異なる写像を表し、同じ写像でも基底が違えば数表が変わる。
$T(x,y)=(x+y,y)$、$B'=((1,0),(1,1))$ に対する表示行列を求めよ。
標準表示 $A=\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix}$、$P=\begin{pmatrix}1&1\\0&1\end{pmatrix}$ なので $P^{-1}AP=A$。また基底ベクトルの像を直接座標表示しても同じ列を得る。
次は、写像から見えない核方向を同一視する商空間へ進みます。
行列の見た目と写像の本質を分離できた。固有値や行列式が相似で不変となる理由へ続く。
次へ持ち越す問い
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