非斉次方程式の解が二つ見つかったとき、その差にはどんな規則があるだろうか。
このページでできるようになること
非斉次系の全解を、特解と核の和として記述できるようになる。
第1章では連立方程式を計算してきました。ここでは、得られた結果を一つの構造定理へまとめます。非斉次方程式の解集合は、存在するなら斉次解空間の平行移動です。
$$
N(A):=\{x\in K^n\mid Ax=0\}
$$
と置きます。$x,y\in N(A)$、$a,b\in K$ なら
$$
A(ax+by)=aAx+bAy=0.
$$
したがって斉次解を足したり数倍したりしても斉次解です。次章では、この性質を部分空間と呼びます。
二解の差が斉次解になることと、特解へ斉次解を足せば再び解になることを両方向から示す。
$Ax=b$ が一つの解 $x_0$ をもつなら、解全体は
$$
x_0+N(A)=\{x_0+v\mid v\in N(A)\}
$$
である。
$x$ が任意の解なら
$$
A(x-x_0)=Ax-Ax_0=b-b=0
$$
なので $x-x_0\in N(A)$。したがって $x=x_0+v$ と書ける。
逆に $v\in N(A)$ なら
$$
A(x_0+v)=Ax_0+Av=b+0=b
$$
なので $x_0+v$ は解である。両方の包含が示された。
$$
\begin{cases}
x+y+z=2,\\
2x+2y+2z=4
\end{cases}
$$
の一つの解は $x_0=(2,0,0)^{\mathsf T}$ です。斉次系で $y=s,z=t$ とすると $x=-s-t$ なので
$$
N(A)=\left\{
s\begin{pmatrix}-1\\1\\0\end{pmatrix}
+t\begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix}
\mathrel{\Big|}s,t\in K
\right\}.
$$
したがって解全体は
$$
\begin{pmatrix}2\\0\\0\end{pmatrix}
+s\begin{pmatrix}-1\\1\\0\end{pmatrix}
+t\begin{pmatrix}-1\\0\\1\end{pmatrix}.
$$
$x_0$ は位置を決め、$N(A)$ は解集合の方向と自由度を決めます。別の一つの解を基準に選んでも、同じ集合になります。
二解の差が斉次解になることと、特解へ斉次解を足せば再び解になることを両方向から示す。
$x_0,x_1$ がともに $Ax=b$ の解なら
$$
x_0+N(A)=x_1+N(A).
$$
$A(x_1-x_0)=b-b=0$ だから $x_1-x_0\in N(A)$。任意の $v\in N(A)$ に対し
$$
x_0+v=x_1+(x_0-x_1+v),
$$
括弧内は $N(A)$ に属する。よって左辺の集合は右辺に含まれる。$x_0,x_1$ を交換して逆の包含も得る。
二次以下の多項式で $p(0)=1,p(1)=2$ を満たすものは
$$
p(t)=1+t+c(t^2-t)
$$
でした。一つの解 $1+t$ と、二点で零になる多項式全体 $c(t^2-t)$ の和です。数ベクトルでなくても、条件が加法と数倍に両立すれば同じ構造が現れます。
$Ax=b$ に解がなければ、基準解 $x_0$ を選べないため上の表示は作れない。空集合を斉次解空間の平行移動と呼ばない。最初に階数条件で存在を判定する必要がある。
$x_1,x_2$ が $Ax=b$ の解なら $x_1-x_2$ が斉次解であることを示せ。また、斉次解 $v$ に対して $x_1+v$ が非斉次系の解であることを示せ。
線形性から
$$
A(x_1-x_2)=Ax_1-Ax_2=b-b=0,
$$
$$
A(x_1+v)=Ax_1+Av=b+0=b.
$$
答えの位置と形を分離できた。この構造は後の核・商空間・最小二乗で繰り返し現れる。
次へ持ち越す問い
この見方を、次のページではより広い対象またはより計算しやすい形へ移す。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する