空間を二つの成分へ分けたとき、各ベクトルの分解が一意になる条件は何だろうか。
このページでできるようになること
直和を一意分解として判定し、部分空間の補空間を構成できるようになる。
ベクトルを独立な成分へ一意に分けられると、問題を小さな部分へ分離できます。
$U,W\subset V$ に対し
$$
V=U+W,
\qquad U\cap W=\{0\}
$$
の両方が成り立つとき $V=U\oplus W$ と書き、直和という。
二つの分解の差が共通部分に入ることを使い、和が全体で共通部分が零なら一意と示す。
$V=U+W$ とする。$U\cap W=\{0\}$ であることと、任意の $v\in V$ の表示
$$
v=u+w,
\qquad u\in U,w\in W
$$
が一意であることは同値である。
共通部分が零とする。$u+w=u'+w'$ なら
$$
u-u'=w'-w.
$$
左辺は $U$、右辺は $W$ に属するので共通部分に属し、零である。よって $u=u',w=w'$。
逆に表示が一意とする。$x\in U\cap W$ なら
$$
0=0+0=x+(-x)
$$
は二つの $U+W$ 表示である。一意性から $x=0$。よって共通部分は零だけである。
二つの分解の差が共通部分に入ることを使い、和が全体で共通部分が零なら一意と示す。
有限次元 $V$ の任意の部分空間 $U$ に対し、$V=U\oplus W$ となる部分空間 $W$ が存在する。
$U$ の基底 $u_1,\ldots,u_k$ を $V$ の基底
$$
u_1,\ldots,u_k,w_1,\ldots,w_r
$$
へ延長し、$W=\operatorname{span}\{w_1,\ldots,w_r\}$ とする。全基底が生成するので $V=U+W$。共通部分の元を二通りに表して移項すると全基底の線形関係になるため、独立性からすべての係数が零。よって共通部分は零である。
実数上の関数 $f$ に対し
$$
f_{\mathrm{even}}(x)=\frac{f(x)+f(-x)}2,
\qquad
f_{\mathrm{odd}}(x)=\frac{f(x)-f(-x)}2
$$
と置けば $f=f_{\mathrm{even}}+f_{\mathrm{odd}}$。両方の性質をもつ関数は零関数だけなので、関数空間は偶関数空間と奇関数空間の直和です。
$\mathbb{R}^2$ の $x$ 軸に対し、$y$ 軸も直線 $\operatorname{span}\{(1,1)\}$ も補空間である。内積を導入すると直交補空間という標準的な選択が得られる。
$U=\operatorname{span}\{(1,1)\}$、$W=\operatorname{span}\{(1,-1)\}$ に対し $\mathbb{R}^2=U\oplus W$ を示せ。
二本は独立で二次元空間の基底だから和は全空間。$a(1,1)=b(1,-1)$ なら成分から $a=b$ と $a=-b$、よって $a=b=0$。共通部分は零である。
第2章で、生成・独立・基底・次元・直和という空間の静的構造を得ました。次章では空間の間を移す線形写像を調べます。
偶関数と奇関数のように、複雑な対象を干渉しない二成分へ分けられる。
次へ持ち越す問い
この見方を、次のページではより広い対象またはより計算しやすい形へ移す。
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